請求書の発行業務は、多くの企業にとって手間のかかる反復作業です。
特に顧客数が多い場合、毎月の業務負担は軽視できません。
今回は、株式会社タイムバースが提供したソリューションで、スプレッドシートを活用した請求書発行業務の完全自動化を実現し、Google Apps Script(GAS)のタイムアウト問題を解決した事例をご紹介します。
目次
導入事例の概要(導入背景と課題)
今回のご依頼元は、顧客数が約100社の中小企業様。
毎月の請求書発行業務に以下のような課題を抱えていました。
現状の業務フロー
- 売上管理シートから顧客データ(会社名、請求金額など)を手動で抽出。
- 請求書テンプレートシートにデータを貼り付け。
- PDF形式で請求書を出力し、Google Driveに保存。
- 保存したPDFをメールに添付して送付。
業務の負担
毎月約70~80社分の請求書を発行するため、この作業に約2時間を費やしていました。
これがシンプルな反復作業であるが故に、手間と時間がかかり、業務効率を下げていました。
課題
- スプレッドシートを活用したGASスクリプトを導入したが、データ件数が多いため処理が途中でタイムアウトしてしまい、自動化が実現できない。
- 手作業を完全に自動化し、作業時間を削減したい。
よくあるケースとIT初心者の悩み
このような課題は、特にITに詳しくない経営者や少人数チームの企業にとって非常に「よくあること」です。多くの企業では、業務効率化の必要性を感じつつも、以下の理由で解決が後回しになりがちです。
- 技術的な知識不足
「どのように自動化すればいいか」「何が問題でタイムアウトが発生しているか」がわからず、対応が遅れる。 - 既存業務への依存
すでに慣れている手作業のフローから抜け出せず、非効率な状態を受け入れてしまう。 - ツールの使いこなしに自信がない
スプレッドシートやGASなどの機能は便利ですが、カスタマイズやトラブル対応には一定のITスキルが求められるため、導入のハードルが高いと感じる。
タイムバースが提供したソリューション
スプレッドシートを基盤とした自動化の設計
顧客が既存で利用していたスプレッドシートをそのまま活用し、以下の自動化フローを設計しました。
- 売上管理データからの情報取得
- 売上管理用スプレッドシートには、顧客の会社名、請求金額、請求対象期間などの情報が格納されていました。
- GASを使い、特定の行から必要なデータを自動的に取得する仕組みを作成しました。データ抽出の基準は、例えば「未処理のデータ」や「指定月のデータ」に柔軟に対応。
- 請求書テンプレートへの反映
- 既存の請求書テンプレートシートにデータを自動入力するスクリプトを開発。
- 顧客が使い慣れたフォーマットをそのまま活用することで、導入時の混乱を防止しました。
- PDFの自動生成と保存
- スクリプトを使い、テンプレートシートからPDF形式で請求書を生成。
- 自動的にGoogle Driveに保存し、各請求書が適切なフォルダに整理される仕組みを構築しました。
- ファイル名は「顧客名_請求月」の形式にするなど、管理しやすいルールを設定。
GASタイムアウト問題への対策
GASには1回のスクリプト実行が6分で制限されるという仕様があり、大量データを処理する際に途中でタイムアウトする課題がありました。この制約を克服するため、次のような工夫を実施しました。
- 処理の分割
- スクリプトの実行範囲を「一定のデータ量」や「特定の条件を満たす行」に絞ることで、一度に処理するデータを減らしました。
- 各処理が5分以内で完了するようにタスクを分割し、効率的にデータを処理しました。
- トリガーによる再開処理
- GASのトリガー機能を活用し、処理が中断された場合でも、次回のスクリプト実行時に途中から再開できる仕組みを設計しました。
- 未処理の行を記録する仕組みを組み込み、スクリプトが次回実行時に続きのデータから処理を再開するように設定。
- スクリプトの最適化
- 処理効率を向上させるため、無駄なループや関数呼び出しを削減。例えば、データ取得と反映をバッチ処理で行い、実行時間を短縮しました。
ユーザーフレンドリーな操作性の実現
請求書発行システムは、顧客がボタン一つで操作できるシンプルなUIとしました。
- スクリプト実行ボタン
スプレッドシート上に「請求書を発行する」というボタンを追加しました。
このボタンを押すことで発行処理が開始するため、スクリプト画面を起動する必要がなくなりました。 - ログ表示
処理が正常に完了したか、途中で中断されたかをスプレッドシート内に記録。これにより、進行状況を直感的に把握できるようにしました。
導入サポートとトレーニング
顧客がスムーズにシステムを運用できるよう、以下のサポートを提供しました。
- 初期設定の支援
- 顧客の売上管理シートに合わせたカスタマイズを実施。
- 初回実行時のデータ検証や動作確認をサポート。
- トレーニングセッション
- スクリプトの実行方法や注意点を説明。システムの操作に慣れていない従業員でも安心して使えるよう指導しました。
- 導入後のサポート
- 万が一スクリプトに問題が発生した場合や、新たな要望が出てきた場合に備え、継続的なサポート体制を整備。
GASとスプシを活用するタイムバースの強み
タイムバースのソリューションは以下の点で顧客に高い評価をいただきました。
- 既存環境をそのまま活用
新しいツールやプラットフォームを導入することなく、スプレッドシートとGASだけでシステムを構築したこと。これにより、導入コストを最小限に抑えることが可能です。 - 柔軟な対応力
データ量や特定の要件に応じてシステムをカスタマイズし、顧客ごとの課題を解決します。 - 確実な課題解決
GASタイムアウトという技術的な制約にも柔軟に対応し、大量データ処理を安定化。顧客が抱えるボトルネックを完全に解消しました。
提供サービスのポイント
タイムバースのソリューションが他社と一線を画す理由は、その設計思想と柔軟性にあります。スプレッドシートとGASを組み合わせることで、既存環境を活用しながら課題を解決することに重点を置きました。以下は、提供したサービスの特徴と強みです。
既存環境を活用したシステム設計
顧客がすでに利用していたスプレッドシートをそのまま基盤として活用したため、新たなツールやシステムを覚える必要がなく、初期導入時の手間を最小限に抑えました。また、顧客が慣れ親しんだテンプレートをそのまま活用することで、操作ミスや混乱を防止しました。
これにより、スムーズな導入が実現し、初月から効果を実感することができました。
柔軟な自動化プロセス
スプレッドシートをベースにしたソリューションは、業務の流れに合わせて柔軟にカスタマイズが可能です。以下のようなポイントで自動化を実現しました。
- 売上データの選択:未処理データだけを自動的に検出し、作業漏れを防止。
- データ反映の精度:請求書テンプレートシートに正確なデータを反映し、手作業で発生していた入力ミスをゼロに。
- PDF出力と管理:出力されたPDFファイルがGoogle Driveに自動保存され、従業員が管理作業を行う必要がありません。
特に、PDFの保存先やファイル名をカスタマイズできる点は、顧客が自社の管理体制に合わせて柔軟に運用できる設計となっています。
GASの制限を克服する仕組み
大量データの処理で直面するGASのタイムアウト制限に対応するため、処理を分割する設計を採用しました。これにより、データ件数が増えてもスクリプトが途中で中断する心配がなくなりました。また、トリガー機能を使った再開処理により、大規模なデータ処理が必要な顧客にも対応可能なシステムとなっています。
導入後のサポート体制
タイムバースは、単にシステムを提供するだけでなく、導入後の運用支援にも注力しました。トレーニングセッションを通じて顧客の担当者が自立してシステムを運用できるようにサポートし、トラブル発生時には迅速に対応できる体制を整えました。
タイムバースのサービスのポイントは、効率化だけでなく「使いやすさ」と「顧客ごとの課題に応じた柔軟な対応力」にあります。
導入後の変化と成果
請求書発行作業が0時間に
毎月2時間を費やしていた請求書発行作業が完全に自動化されました。従業員が手作業で行っていたデータ入力やPDFの出力、ファイル保存、メール送付といった一連のプロセスがスクリプトによって処理されるため、人的リソースを他の業務に振り向けることが可能になりました。
「ボタンを押すだけで請求書が完成する」という仕組みにより、従業員の作業負担が劇的に減少しました。
大量データ処理がスムーズに
これまでGASのタイムアウト制限によって発生していた処理の中断が完全に解消されました。大量のデータを処理する場合でも、トリガーによる分割処理により、エラーなく安定して動作。顧客は件数を気にすることなくシステムを利用できるようになりました。
ヒューマンエラーの削減
手作業でのコピペやデータ入力ミスがなくなり、請求書の正確性が向上しました。これにより、顧客対応時に請求金額の確認や訂正にかかる手間が大幅に削減され、社内外の信頼性が向上しました。
社員が本業に集中できる環境を実現
これまで請求書発行に割かれていた時間がゼロになったことで、従業員はより重要な業務に集中できるようになりました。たとえば、営業活動や顧客サポートに注力することで、企業全体の生産性が向上。スタートアップにとって、限られたリソースを有効活用できる仕組みが整いました。
直感的で簡単な運用
導入後のトレーニングを通じて、技術に詳しくない従業員でもスクリプトを活用できるようになりました。操作が簡単で、トラブル発生時にもシステムログを確認するだけで原因を特定可能。これにより、顧客自身が日常的に運用できる体制が確立されました。
まとめ
請求書発行のような定型業務を自動化することで、企業の業務効率は大幅に向上します。タイムバースでは、スプレッドシートやGASを活用し、既存環境を活かした柔軟なソリューションを提供しています。
- スプレッドシートの既存環境をそのまま活用。
- 大量データ処理やタイムアウト問題にも対応可能。
- 完全自動化で、手作業の負担をゼロに。
スプレッドシートを使った請求書発行やGASの活用に課題を抱えている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。業務効率化を全力でサポートします!